私しか、知らないで…

「ごめーん!遅くなった!」



え!



カラオケのドアを開けたら
うちのクラスじゃなかった



アレ?3−Cか

間違えた



慌ててドアを閉めようとしたら
北翔が一緒に出てきた



「ごめん、間違えちゃった」



「3−Aあっちだよ」



北翔がついて来てくれた



「藤森に気持ち伝わった?」



「ん?うん…
北翔の言うとおり、伝わってた」



「へー…よかったね」



「北翔、今までありがと
先生も北翔に感謝してるって
伝えといてだって」



「自分で言えっつーの…!

花澤…
オレ達、大学もバラバラだけどさ
なんかあったら
いつでも電話してよ…

あ、でも、もぉ、必要ないか…
藤森と…」



ブー…ブー…ブー…



「北翔、ケータイ鳴ってるよ」



「ん???オレ?

…え…?花澤…え、オマエ?」



「出なよ!」



「なに?
…ハイ…」



「北翔、今日の帰りも送ってほしい」



「藤森、車で迎えに来ねーの?
まぁ、いいけど…
なんで、目の前にいるのに
わざわざ電話すんの?」



「ん?だっていつでも電話して…って」



「直接、言えよ!」



「うん
でも、なんか、恥ずかしかったから」



「なにが?」



「あのね…
…私ね…」



「うん、なに…?早く!」



「北翔のこと…

北翔のこと、好きだよ」



「は…?」



「大学離れちゃったけど
また、手も繋ぎたいし…

今度は電車の中だけじゃなくて
デートしたり…
こんなふうに電話したり…

学校で会えなくても
会いたいな…って思ったら
会いに行きたい

北翔にフラれてから
女の子って認めてもらうために
頑張ってたんだよ、私

もちろん
これからも頑張るよ

だから…
だから、北翔の彼女になりたい」



「…は?」



「やっぱり、もぉ遅いか…

無理してないよ
ホントに好きになったのに…
北翔、もぉ冷めちゃった?」



「…」



「アレ?
通話切れた?」



目の前にいる北翔からは

返事はなくて

スマホに当てた耳が赤かった



「もしもし…?

ねぇ、北翔…

…好きだよ…」



「…ぉい…

なにこれ?

もしもし…じゃなくて…

直接言われるより恥ずいけど…


一緒に帰るよ
終わったら、また電話して…」



「うん…
あとの方の答えは?」



「帰りに、言う」



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