私しか、知らないで…

「もしもし…
北翔、終わった」



「うん、入り口で待ってた」



「あ、ごめんね!
すぐ行く!」




北翔と一緒に帰った



「制服で帰るの最後だね」



「あぁ…」



いつもの帰り道なのに

ドキドキするよ

北翔



ドキドキ…


ドキドキ…



「北翔、二次会行かなくてよかったの?」



ドキドキ…



「あぁ…」



ドキドキ…



「前田に誘われたでしょ
あ、井上さんにも誘われなかった?」



ドキドキ…



「あぁ…
誘われた」



ドキドキ…



私の胸の音が北翔に聞こえないように

私は間なく話した



なのに

いつもより北翔

言葉数が少ない



ドキドキ…


ドキドキ…



きっと私のこと

もぉ好きじゃないのか…



「じゃあ、行けばよかったのに…」



ドキドキ…


ドキドキ…



「花澤と先に約束したから…」



ドキドキ…



そう言って

私の手を繋いでくれた



ドキン…



「まだ、電車じゃないよ」



ドキドキ…

ドキドキ…



「繋ぎたいんだろ?
電車じゃなくても…」



ドキドキ…

ドキドキ…



「え…?…うん…」



じゃあ…



ドキドキ…

ドキドキ…

ドキドキ…



「オレも繋ぎたかったよ…ずっと

花澤が手を繋ぎたかったのは
藤森じゃなかったの?

せっかく卒業したのに
藤森じゃなくていいの?」



ドキドキ…

ドキドキ…



「うん
先生とは握手してきた

私をずっと守ってくれてたのは
北翔だし…

ずっと電車の中でドキドキしてたよ、私」



ドキドキ…

ドキドキ…



今も鳴り止まない



ドキドキ…

ドキドキ…



「うん
オレもしてたよ」



ドキドキ…



どんどん早くなる



ドキドキ…



「ホントに?
男子もするんだ」



ドキドキ…

ドキドキ…



「好きだからだろ…

好きな子と手繋いだら誰だって…

一緒にいるだけでもドキドキするし…

おい!
恥ずかしいから、言わせるな!」



ドキドキ…



「嬉しい」



ドキドキ…



「その好きな子が
オレのこと好きって知ったから
もっとドキドキするし…」



ドキドキ…



北翔の手から伝わってきそう

北翔の胸の音



ドキドキ…



「うん
好きだよ、北翔」



ドキドキ…



「やめろ…」



ドキドキ…



「うん…じゃあ、もぉ言わない」



ドキドキ…



「うん、オマエが言わなくても
オレが言うから…」



ドキドキ…



「ん?なにを…?」



ドキドキ…



「待って…オレのタイミングで言うから…」



そう言って北翔は私の手を強く握って

そのまま歩いた



ドキドキ…

ドキドキ…

ドキドキ…



卒業式の話とか

さっきカラオケで歌った歌

前田が騒いで店の人に怒られた話



電車に乗って

家の近くまでずっと話してて

ずっと手は繋がれてた



「離したくないな…」



「え…?話したくなかった?
ごめんね、いっぱい話しちゃって、私…」



「離したくない
ずっと繋いでたい、この手…

それぐらい、好き、花澤のこと」



好き…って言葉と一緒に

北翔の耳がまた赤くなっていくのがわかった



一度おさまりそうだった胸の音が

また高鳴った



ドキドキ…

ドキドキ…

ドキドキ…



ドキドキしてる?

北翔も



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