許す事ができるの?

翌日、携帯に知らない番号から
電話があり
出ると、弁護士だと名乗り
「早急にお会いしたい。」
と、言われて夕方に時間を作る。

やはり、恵が依頼した先生だった。

離婚届には、恵の名前と
証人欄には、恵の大学時代の
友人の名前が記載されていた。

恵からは、何も要らない
マンションの荷物も全て廃棄して
欲しい。
ただ、二度と会うことも
関わらることも止めて欲しい
との依頼だった····と。

弁護士の先生から
矢野 由美(やの ゆみ)と書かれた
名刺を頂いた。
「青木さん、あなたはなぜ、
嘘をついたのですか?
一つつけば、次も···次も···と
なります。
恵さんのあなたへの信頼は
まったくありませんよ。

隠し事や嘘をつかない約束を
何度もかわしたのでしょ?
それなのに、あなたは欺いた。

恵さんに、夫婦の修復の案を出すことも
出来なかった。」
と、「嫌だ。」としか言わない俺に
先生は呆れながら
そう、言った。

それに
「なぜ、前にあなたとの
付き合いを止めようと思うほど
恵さんを悩ませた女性を秘書として
そばに置いているのですか?
その事も、あなたは、
何一つとして、恵さんに
話していません。
裁判になっても
まず、あなたに勝ち目はありません。

恵さんに対して
少しでも悪いと思われるなら
速やかにご記入して下さい。」
と、言われた。

戸川先輩の事も知られていた····のか

戸川朱里先輩が水島建設にいるのは
本当に····知らなかった。

社長秘書をしていたらしいが
父には、男性の秘書が付き
戸川先輩が専務である
俺に付く事になったらしい。

「新たな専務に付くように
言いつけられてきたら、
律君でびっくりした。」
と、言われた。

交代して欲しいとも言えずに
ずるずるときていた。

仕事をやめる事も考えた
だが、今まで形見の狭い思いをしていた
母のために辞めることが
出来なかった。

全てを話していたら良かったんだ。
この幸せを手放したくなくて
話せなかった俺が全て悪い。

「なにも知らずに
そばにいる私を笑っていたんだ。」
と、恵は言った

そんなつもりは、
もうとうなかったが······
返す言葉も·····なかった····
うちひしがれた気持ちのまま
離婚届に記入する。

証人欄は、母に書いてもらった。
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