許す事ができるの?

···由紀子


あの人が亡くなった。

ホスピスの中で
やれることは、やれたと思う。

奥様の光代さんは、
私にも気を使ってくれたが
私はあくまでも、患者と看護師を
貫いた。

ただ、最後にだけ
光代さんに呼ばれて
病室に入ると
あの人から
律を一人で生ませた事
よい子に育ててくれた事に
お礼を言われた。

私は、ありがとうございます。
と、それだけを伝えた。

光代さんや健さん、靖さんの
お陰だ。

葬儀にも参加して欲しいと
言って頂けたが
律と二人お断りをした。

最後は、家族だけで過ごして
欲しかったから。

「ゆきちゃん、お待たせ。」
「全然、ほら行きましょう」
今では、みっちゃん·光代さんと
二人で、ランチに行ったり
旅行に行ったりして
楽しんでいる。

みっちゃんは、あの人の世話で
友人たちも離れて行ったと
だから、友人になってと
頼まれた。
私で良いのかと
大分悩んだが
本当に優しい人だから
私も心を許してしまった。

健さんや靖さんからも
母をお願いします
と、頼まれてしまって

二人も本当に優しい子達で
律も良くしてもらって
いるみたいで。

こんな風な生活になるなんて
想像もしていなかった。

さあ、今日も楽しんで来よう。
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