許す事ができるの?

忘年会から帰ると
恵も帰ってきていた。

ソファーに座っている恵に
終わったのかと訊ねると
どこで、忘年会があったのかと
訊ねられて
躊躇なく居酒屋だと答えた

「そうやって、平気で嘘をつくんだ
水島建設の専務さん。」
と、言われた。

そう、ずっと恵に言えなかった。

始めから話していたら良かったのに
愛人の子だ·····と言えなかった

入社してしばらくすると
社長(父)に調べられて
専務として仕事をやるように
言われた。

父がどう言うつもりで
言ったのかは、定かではないが
俺は、父から認められたことに
喜びしかなかった。

恵とは、
隠し事はしない。
優しさの嘘も
結局欺く事にかわりはない
なら嘘もつかない。
と、付き合っている時も
結婚してからも約束をしていた。

だが、俺は初めから恵に嘘をついた。

帰りが遅い俺に
何も知らない恵は
会社になれないと大変だよね
と、心配してくれて
付き合っている時も
自分も大変なのに食事や
掃除、洗濯をしてくれた。

専務の仕事が多忙なだけだが
悪いと思うより
父に認められ
恵に優しくされて
俺は浮き足だっていた····


一つ、つけば、二つ、三つと·····
口から、平然と嘘がでる。

彼女は、そういう事をもっとも
嫌う人だとわかっていたのに。

でも、恵を愛しているし
別れたくない
何度も、何度も伝えたが
恵から返事はなく
泣きつかれて寝ている間に
恵は、マンションを出ていた。


それでも仕事に
行かないわけには行かず
その日は、早目に切り上げて帰る···と
テーブルの上には、結婚指輪
マンションの鍵は、
玄関ポケットに入っていた。

愕然となり、その場で膝をつく

何度も恵に連絡をする

切ってはかけ·····切ってはかけ·····

だが、恵に繋がる事はなかった。
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