こんな思いを···いつまで

更衣室からお弁当を取り
食堂に向かう
私を見つけて手を振ってくれる
山内さんに頭を下げて近づく。
「さぁ、たべましょう。」
と、言われて
弁当を開き
「いただきます。」
と、はしを動かすと
「ねぇ、そのお弁当、自分で?」
「えっ、はい。一人暮らしですから。」
「すごい。お店で買ったみたい。」
「ありがとうございます。
まだ、はしをつけていませんので
よろしければ。」
と、言うと
「えっ、いいの?
そしたら、卵焼きと肉巻きを」
「はい、どうぞ。」
口にした山内さんは、
「う~ん、美味しい!」
と、大絶賛
「ありがとうございます。」
と、言って食べる。
「一人生活って、御両親は?」
「父は···いますが、母は私を生む···と。」
「そうなんだ。ごめんなさい。」
「いえ。私は祖母に育ててもらいました。
厳しく、優しい祖母です。」
「そうなの。お父さんは一人で?」
と、言われて
「たぶん。私は物心ついた頃から
父とは、離れています。」
私を嫌う父を思うとたまらなくなる。
「そう。なにか事情があるみたいね。」
と、言われて
はっと、顔をあげると
山内さんは、優しい顔をして
微笑んでくれて
鼻の奥がつんとした。

泣いては、ダメだと我慢する
そんな山内さんは、
「珈琲、もらってくるわ。」
と、言ってくれた。

気づくと、食堂には
沢山の人がいた。

皆さん、賑やかだ。

山内さんと珈琲を飲みながら
会社の話をした。
午後からは、役員室から
各会議室へと回って
総務課へ。

私が更衣室にお弁当を取りに
行っている間に
山内さんが社長秘書の菅さんに
連絡して、私を総務課に欲しいと
言ってくれたらしい、

どうせ、専務についても
山本さんいるし
あの二人が鮎川さんの仕事を
考えているとは思えないから
と。
菅さんが社長に話をしてから
すぐに連絡が来て
「山内さんに一任します。
と、社長からです。」
と、言われた。

実は、山内さんと菅さんは、
ご夫婦で、別姓なのだと
後に教え頂いた。

社長室の案内は要らないことは
と、伝えた。

大倉の総帥には、もう会っているから
それに、社長室に入る必要ない。

専務室も同じと思っていたが
« コンコン »
山内さんがノックして
ドアを開けた。

机でパソコンを打つ専務を
覗くように山本さん。
「失礼します。
鮎川さんの社内案内を。」
と、言うと
「ああ、鮎川さん
案内が終わりましたら
「いえ、鮎川さんには総務を
手伝って頂きます。
専務には、山本さんがいますし
専務が、鮎川さんへの
仕事を考えているとは
思えません
ですので、社長より許可を得ております。」
と、山内さんが言うと
「えっ、あっ、すまない。
では、宜しく。」
と、言われて
私は、二人の顔を見ることもなく
専務室を後にした。

それから、各会議室を教えて貰い
総務課へ。
< 14 / 69 >

この作品をシェア

pagetop