こんな思いを···いつまで
十四話···歪み
···幸せと絶望
二人は、一週間の内、
一度も顔を会わせない事もあるが·····
マシューはと言うと、
母国にいる時は、必ず帰宅して
ひまりを抱き締めて寝る。
今までなら、そのまま社内で寝るか
もよりのホテルに泊まるかだったが
マシュー自身も
こんな自分が可笑しくてたまらない。
ただ、ただ、ひまりの顔を見て
抱き締めて寝ないと落ち着かないのだ。
ひまりはというと·····
ずっと、一人で生活をし
一人で寝ていたから
他人と一緒に寝るとか
考えられない··はず····なのに。
アメリアから
夫婦の部屋として
案内された部屋?····は、
かなり広いリビングと
寝室·····
寝室には、クイーンサイズ?のベッド
何人寝れるの?と言いたいくらい
寝室の中にサニタリー室があり
後は、衣装部屋
ダイニングとキッチンもついてある。
その部屋の前にマシューの書斎と
ひまりのピアノの部屋
ピアノも素晴らしい音色で
ひまりは、嬉しくて
たまらなかった。
マシューの優しさに感謝しかない。
マシューと一緒に寝ると
思っても·····
怖い····とも···
嫌だ····とも···思わず
ただ、ベッドが
大きいと思っただけだった
本当に、マシューは不思議な人だ。
だが、アメリアから
モルガン財閥について教わる事で
マシューが、どれだけ忙しいのかが
伺い知れた。
こんなに忙しい中
何度も、何度も、私の為に
日本に来たりして
大丈夫だったのかと心配になり
アメリアに訊ねると
『ひまり様だからです。
それ以外なら、あり得ません。』
と、言われ
本当に、マシューに愛されていると
想い知る事に·····
そんなマシューに
いつの間にか·····
ひまり自身も想いを寄せるように
なっていた。
·······が·····
この所、体調が悪い
食欲もなく、身体がだるく
熱っぽい。
アメリアから
『ひまり様、お月の物は来ておりますか?』
と、訊ねられるまで
自分に生理が来ていないことに
気づいていなかった。
アメリアは、喜んだが····
ひまり様の顔を見て·····
もしや·····と、思いながら
『ひまり様、
モルガン専属の医師を呼びますので、
一度診て頂きましょう。』
と、アメリアに言われたが
ひまり様は、首を横に何ども振る。
アメリアは、ひまり様の手を握りしめ
『この事は、私と医師とひまり様の
中だけで。』
と、伝えると
ひまりは、涙をためた目でアメリアを
見つめた。
不安と悲しみにくれる
ひまり様に
アメリアは、堪らなくなるが
一度、頷くと
ひまり様も頷いた。
ひまり様の体調不良と言う事で
専属医が呼ばれた。
医師には、守秘義務があるから。
『専門では、ありませんが
妊娠2ヶ月を過ぎているかと。』
と、言われて
ひまり様は、その場で意識を失った。
今、マシュー様は、
イギリスの皇族との面談と
イギリスの財閥と交渉で
イギリスに行かれ
お帰りは、早くても三日後の予定だ。
どうすれば····と、思うが
ひまり様を見守るしかない。
倒れたひまり様を
近くのソファーに医師と寝かせる。
医師は、昔からモルガンに
支える医師で
50才を越えるアルバート医師
医師としても最高の方だ。
マシュー様のお父上の後輩になられるとか。
医師アルバートは、
この時間にモルガン邸からの
呼び出しに疑問を持ちながら
急ぎかけつけると·····
大きなソファーに座る女性を見て
あまりの美しさに、息をのむ
『アルバート先生、
マシュー様の奥様・ひまり様です。』
アメリアからの紹介に
彼女が顔をあげると····
彼女の瞳は、悲しみにくれていた
その瞳に、
こちらまで、苦しくなるが·····
診察を行い、結果を伝える····と····
崩れ落ちる彼女をアメリアと
支えてソファーに寝かせる。
アメリアから
くれぐれも····と。
大丈夫······守秘義務は必ず····と。
アルバートは、
マシュー様の幸せを願っているが
今日からひまり様の幸せも願った。