SP警護と強気な華【完】

当時カトレアを殺害する方向で考えていた父親だったが、拉致監禁事件のあと記憶を失った事は想定外だった。

いつ思い出すか気が気ではなかったが
祖父によって追い出されてしまった以上
近付く事が不可能となり今まで顔を出さなかった。

母親も祖父も亡くなった今
今度こそ10億を手に入れるため
カトレアの前に現れた事を自ら説明したのだ。

「そんなの…あんまりよ…」

カトレアの目から零れる涙は止まらず
俯いて悲痛な思いを呟いた。

「私だけ何も知らないまま大人になって
 お母様とお爺様は苦しみ続けて…
 それが全部、遺産のせいだなんて
 そんなにお金が大事なのッ!?」

俯いていた顔を上げ
父親を睨むように叫んだ。

それは、娘が父親に向けるには
あまりに辛すぎるもの。

しかし父親はまったく動じず
それどころか…

「もちろん当たり前だよカトレア。
 世の中、お金が全てだからね」

冷たい微笑みで言い放つ父親に
カトレアは絶望を感じてしまい―――

「…わかった」

瞬き1つせず
開かれた目から流れる涙が”決意”を物語る。
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