SP警護と強気な華【完】

そんな些細な会話をしていると
予鈴が鳴り、学生達の声が止む。


――ガチャ


静まり返る講義室の扉が開き
登壇した1人の講師。

「…ん?――」

その人物を見るなり
カトレアは思わず固まってしまった。

「どうしたの?」

「ご、ごめん…
 なんでもない…」

隣に座っているカスミは
瞬きもせず講師を見つめるカトレアの様子が気になって声を掛けるが、彼女は誤魔化した。

紺色のスーツに
アッシュグレーの髪は軽めのスパイラルパーマが掛かって、無造作に崩されている。
その前髪は、長いせいか銀縁眼鏡に遮る形になっていて、若干目元が見えづらいのだが。

(柊さん…?)

その雰囲気は
どことなく彼に似ているのだ。

しかしSP姿の柊は
前髪は邪魔にならないようにか軽く上げているし、髪色は黒。
ワックスのせいかパーマ感もなければ
眼鏡も掛けていない。

だから他人の空似…と言えばそう思える。

「えー
 黒谷講師の代わりに今日から講義を受け持つ事になりましたー
 “柊”と言います。
 とりあえず宜しくー」


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