SP警護と強気な華【完】
“他人の空似”…などではなかった。
暗い雰囲気を醸し出したその声のトーンは一定で
テンション低めに且つ脱力感漂う喋り方は
SPの柊とはまるで違うのだが
容姿と声質は本人で間違いがない。
(どうして彼が“先生”としているの?)
講師として登場するなんて
本人の口から聞かされてはいないだけに
カトレアは彼に訊ねたくて仕方なかった。
授業の内容なんて
ほとんど頭に入らない。
「カスミ、ごめんッ
ちょっと先行くねッ」
「え?」
講義終了と共にノートを鞄に放り込み
柊を追いかけるように講義室を飛び出すと
校外の広い敷地で見失いかけたが彼を発見。
「柊さんッ!?」
離れた位置から声を張って呼び止めるが
彼は表情変えず
それほどリアクションもせずに
歩む足を止めてゆっくり振り返った。
「やっぱり柊さんで間違いなかった…
でもどうして大学に?」
駆け寄って近くで見ると
目つきの悪さは、やはりSPの柊本人。
「あまり俺に近付くな。
どこで誰が見ているかわからない」
返事はしているが
どこか冷たい。