SP警護と強気な華【完】
初めて聞く名だったが
柊にとっては正体を突き止めるための第一歩。
「そいつが黒幕か…」
独り言を呟いたつもりだったのだがーー
「ざーんねん。ハズレ
俺は黒幕じゃないなー」
突然背後から聞こえた“男の声”に
『まずいッ』と柊は驚き振り返ったのだが…
遅かった。
1人の若い男がカトレアの腕を掴み
逃がさないようにしていたのだ。
そう、この人物こそが昨日カトレアに接触し
別の“餌”を使って襲わせようとした犯人。
同じ大学に通い
彼女の事を密かに調べていた男。
名を“シオン”
ハンドルネームか本名かは謎だ。
「柊…さん」
捕まってしまった事に申し訳なく
悲しそうな表情のカトレア。
「彼女を放せッ!」
動揺から思わず叫んだが
まわりに人が多い上に
捕まえているこの男を逃すワケにもいかず
柊にとっては、この状況は分が悪い。
「放すワケないじゃん。
俺はこの女に用があるから
アンタは指咥えて大人しくしていなよ」
柊が手を出せないのを良い事に
シオンはカトレアの腕を掴んで歩いていく。