LOVE and DAYS…瞬きのように
桜、踊る
あたしの地元から高校までは、少し遠い。
快速電車に30分揺られ、各駅停車に乗り換えてさらに20分。
同じ中学からこの高校に進学した子はいなかった。
心細くないと言えば嘘になるけれど、嫌な出来事を忘れて一から始めるにはちょうどいいと思った。
「新入生のみなさん、入学おめでとうございます」
体育館に響くマイクの声。
出席番号順に並んだ列で、苗字が“矢沢”のあたしは一番後ろだ。
そのことに少しだけホッとした。
ほとんどの新入生が親と一緒に出席してる中
あたしの右側にぽっかり空いた空席を、なるべく見られずにすむ最後尾でよかった。
着慣れないホワイトのセーラー服の、大きなリボンをいじっていると
ポケットの中で携帯が震えた。