LOVE and DAYS…瞬きのように

廊下に立ち止まってしまったあたしを、アキさんは静かな目で見つめる。


「すみません。……大丈夫です」
 

そう言って無理やり笑顔を作ろうとしたときだった。
 

立ち尽くすあたしの横を、数人の生徒が騒がしい声をあげながら、走り抜けていった。


「ケンカだって! 渡り廊下の下!」
 

まじで? と野次馬の声があがり、周りの生徒たちもバタバタと走り出す。
 

他人のケンカなんか興味ないあたしは、特に気にしていなかった。

だけど次に聞こえてきた言葉で、無視ができなくなった。


「うちの3年の男子らしいよ!」


「――…」
 

ふっと胸をかすめた不安が、みるみる膨れ上がっていく。


心配しすぎだ、自分にそう言い聞かせるけれど

不安はすでに体中に広がり、いてもたってもいられなくなった。
 

あたしはアキさんに頭を下げ、

そして全力で走りだした。





< 166 / 580 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop