LOVE and DAYS…瞬きのように

「それって親父さんの会社ですか?」


「ありえねぇな。親の世話になって満足してるようなやつ、俺は大嫌いなんだ」
 

鼻で笑い、軽蔑するように言う健吾。

なんだろう、以前にもこんな顔を見たことがあるような気がする。


「は~、やっぱり健吾さんはしっかりしてますね。俺とは大違いだ。
でも、進学しないのはもったいないなぁ。昔みたいに部活やってたら、推薦でいいとこ行けただろうに」


「いつまでも古いこと言ってんじゃねぇよ」
 

そう言って健吾はタバコに火をつけると、煙があたしに流れないように少し離れた。
 


あたしはぼんやりと、さっきの健吾の顔を思い出していた。
 
いつだっけ、前にあの顔を見たのは。
 
あ……そうだ。あのときだ。


――『寂しいとか孤独だとか、そんな感傷で自分を甘やかしてるやつを見ると虫唾が走る』
 

ひとり暮らしで寂しくないかと尋ねたあたしに、健吾が言った言葉。

自分の意思を貫こうとする、強い瞳。
 

あのときあたしは、ミツルと同じように健吾を“しっかりしてる”と思ったけれど。


気のせいかな……健吾を少し知った今では、ちょっと違うように思うんだ。


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