LOVE and DAYS…瞬きのように

ホテルを出たあたしたちは、看護学生“サヨ”さんの住む町に向かった。


土曜日だからか家族づれの車が多く、道路は混んでいた。
 

2時間ほどかけてたどり着いた、川沿いの道に建つマンション。

不安と緊張でドキドキしながらチャイムを押した。


「はーい!」
 

インターホンから聞こえてきたのは、思いのほか軽快な声。


「はじめましてっ……アキの友人の、矢沢莉子です」

「あ~はいはい! ちょっと待ってね!」
 

通話が切れて、ドアの向こうから足音が響く。
 

そして次の瞬間、あたしと健吾は面食らった。


開いたドアの足元から、白いモコモコした物体が現れ、あたしたちの足にまとわりついてきたから。



「こらっ、ケン! 飛び出しちゃダメでしょ!」
 

声と共に2本の腕が伸びて、その物体を抱きあげる。

毛糸玉みたいに見えたそれは、可愛らしい小型犬だった。



< 322 / 580 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop