LOVE and DAYS…瞬きのように

「お父…さん……?」


こぼれそうになった言葉を、ぎりぎりで飲み込んだ。
 

グレーのスーツを着た細身の体。

髪には白い筋が混じり、顔のしわも増えているけれど。


優しい横顔はまぎれもなく、子どものころ別れた父だった。
 


お父さん
この町に住んでいたの……? 


あたしはとっさに棚のかげに隠れた。



「部長がコンビニ弁当なんてめずらしいですね」
 
お父さんの隣で、部下らしき若い男の人が言うと


「家内のつわりがひどくてね、夕食が作れないらしいんだ」
 
と、お父さんは顔をほころばせ答えた。


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