LOVE and DAYS…瞬きのように
その幸せそうな瞳は、あたしに気づく気配すらない。
かすかな記憶に残っていた笑顔が
まるで知らない人のように、遠ざかっていく。
――『家内のつわりがひどくてね』
お父さん……
再婚してたんだ。
子ども、生まれるんだ。
ひとりじゃないんだ。
あたしだけが独りだったんだ――…
店を出ると、冷たい風が肌を刺すように吹いていた。
あたしはふらふらした足取りで、サヨさんの家にたどり着いた。
着替えのために寝室に入ったとたん、脱力して床に崩れ落ちた。
「別に……関係ないし」
お父さんが再婚していようが、子どもが生まれようが。
あたしには関係ない。
ちっとも関係ない。
なのにどうして、こんなに涙が出てくるの……?
ほとんど無意識に、携帯を取り出すあたし。
電話帳から、自宅の番号を呼びだした。
プルルル……と呼び出し音が響く。