LOVE and DAYS…瞬きのように

次の日、あたしは朝から快速電車に乗りこんだ。
 

規則的な揺れに身を任せていると、窓から見える景色がだんだん、なじみのある風景に変わって行った。



駅に降りて、胸いっぱいに空気を吸いこむ。

数日ぶりに訪れた、この町。


あたしは帽子を深くかぶり、駅を出た。


向かった先は健吾のマンション。

健吾には内緒で、ひとりでやって来た。
 


……きっと、あたしが「帰ろう」と言っても、健吾はすぐには納得しない。


説得するためには、マンションから“ある物”を持ち出すしかないと思ったんだ。
 


エントランスにたどり着いたあたしは、管理人さんの姿を探した。


健吾の妹だと言って鍵を開けてもらうつもりだった。
 


「君、もしかして……」
 

ふいに声をかけられ、背筋がビクッと伸びる。
 

振り向くとそこには、以前一度だけ見たことのある

健吾のお父さんが立っていた。



< 378 / 580 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop