LOVE and DAYS…瞬きのように
S市に戻ったのは夕方だった。
サヨさんちに続く、川沿いの道。
オレンジに輝く水面に目を細めていると、携帯が鳴った。
画面を見ると、表示されていたのは知らない番号。
「……はい」
「対岸、見てみ」
電話の相手が健吾だったので、あたしは驚いた。
言われたとおり、川をはさんだ向こう側を見ると、近くにバイクを停めた健吾が立っていた。
「この携帯……どうしたの?」
「やっと新しいの買えたんだ。親の名義じゃねぇ、俺の携帯だ」
機嫌のよさがにじみ出ている声。
健吾は饒舌に話を続けた。
「これからは、いつでもお前と話せるな。
会いに行く前にちゃんと連絡できるし。
寝る前だって毎晩――」
「健吾」
「ん?」
「もう、帰ろう」