LOVE and DAYS…瞬きのように
「お前、それ……」
健吾の声が大きく震える。
あたしが取り出したのは、健吾がお父さんに買ってもらったという、陸上用のスパイク。
和室の片隅にずっと、大切そうに置かれていたものだった。
「健吾、これで毎日走ってたんだよね?
まだ家族が一緒に住んでいて、大好きな陸上に打ち込んで……楽しかった頃の思い出が、いっぱい詰まってるんだよね?」
「………」
「こんな物を大事に持ってる健吾が、本当に過去を捨てたがってるわけないよ」
「別に、そんなのいらねぇし」
健吾の言葉を聞いたあたしは、スパイクを持ったまま土手を下りた。
「お前、何する気……」
問いかけを無視して、あたしは小石の転がる河原を歩いていく。