LOVE and DAYS…瞬きのように
「マジでぇ? 柄にもなくトロくせーじゃん」
おかしそうに笑う“シン”さんをもう一度はたき、彼はソファに腰をおろした。
そしてあたしに向かい
「お前はここ」
と、自分の隣をぽんぽん叩きながら言った。
……飼い犬か、あたしは。
つっこみたい気分だけど、部屋を見回しても他に空いている席はなかったのでおとなしく座った。
ソファは中のコイルが錆びついているのか、体重をかけると大きく軋む。
右隣に座る月島健吾とぶつからないよう、あたしは慎重に座った。
だけど2人掛けサイズのソファはせまく、少しでも体を動かせば二の腕のあたりが触れてしまう。
体の右半分の神経だけが、急に敏感になったみたいだ。
「……あの、月島先輩」
「“健吾”」
間髪入れずに訂正された。
どうやら、呼び捨てでいいって言ったのは本気だったらしい。
でもいきなり呼び捨てなんて。やっぱり緊張してしまう。
ケンゴ、ケンゴ、と頭の中で練習してから、あたしは思いきって口にした。
「あのっ、……健吾」
「ん?」
かすかに眉を上げて、優しい笑顔で首をかしげてくれる。
その顔を見たら、あたしの胸はなぜかギューっとなった。