LOVE and DAYS…瞬きのように
そのとき、濡れていた床で足が滑り、ぐらりと視界が傾いた。
転ぶ――
と思って目をつむった瞬間
あたしの体は、たくましい腕に支えられていた。
「あぶねーな」
健吾の声が、頭の上で響く。
「……ご、ごめん」
健吾はあたしから食器をひょいと奪うと
いたずらっぽく笑って、あたしの頬をつねった。
「お前、鈍くさすぎ」
……こんな風にからかわれて
いつものあたしなら拗ねるはずなんだ。
だからそうしようと思ったのに、できなくて。
無理に表情を作ろうとしたら、なぜか涙がにじんで。
「……莉子?」
眉をひそめてあたしを見下ろしてくる健吾。
「ごめん、教室戻るね」
あたしはそれ以上、涙を見られないよう、背を向けて走り去った。