LOVE and DAYS…瞬きのように

澄んだ冷気が襟元から流れこみ、ぶるっと体が震えた。


3月中旬の今は花冷えと呼ぶのもまだ早く、コートを着込んだ人すら見かけるほど。
 

どうしよう……。

自動ドアの前で立ち止まっていたら、だんだん泣きそうになってきた。


だって、さすがに惨めすぎるじゃない。

失恋して、
友達に裏切られて、
変な男にからまれて。

おまけにこんな寒い思いまでするなんて――…


「………」


あれ? 

寒く、ない。
 

さっきまで吹きつけていた風が、なぜかシャットアウトされている。
 

あたしの体をすっぽりと包み込む温もり。

その正体が、見覚えのないジャケットだと気づいたとき、


「着ていけ」


すぐ後ろでそんな声が響いた。

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