LOVE and DAYS…瞬きのように

「健吾は……一緒に待たないの?」


「俺が近くにいたら、あいつ、また自分の気持ちを抑えるだろ?」

 

だから、と健吾は言って、そこで言葉を止めた。
 


泣いちゃいけない。

ここであたしが
泣いちゃいけないんだ……。



“行かないで”って

言っちゃいけないんだ……。




「莉子。今までありがとうな」
 



健吾の想いをムダにしないように


笑って

笑って

バイバイしなきゃ――…





「うん。健吾も、ありがとう」
 




……がんばって微笑んだあたしに

健吾から、最後のデコピン。
 

ちっとも痛くないよ……

そんな優しいデコピンなんかじゃ。




「じゃあな」
 

まるで普段と変わらない様子で、健吾が立ち上がって歩きだす。


あたしはその背中から顔をそむけ、アパートへと戻った。


一段ずつ階段を上りながら、健吾との思い出がよみがえった。


< 532 / 580 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop