LOVE and DAYS…瞬きのように
「健吾は……一緒に待たないの?」
「俺が近くにいたら、あいつ、また自分の気持ちを抑えるだろ?」
だから、と健吾は言って、そこで言葉を止めた。
泣いちゃいけない。
ここであたしが
泣いちゃいけないんだ……。
“行かないで”って
言っちゃいけないんだ……。
「莉子。今までありがとうな」
健吾の想いをムダにしないように
笑って
笑って
バイバイしなきゃ――…
「うん。健吾も、ありがとう」
……がんばって微笑んだあたしに
健吾から、最後のデコピン。
ちっとも痛くないよ……
そんな優しいデコピンなんかじゃ。
「じゃあな」
まるで普段と変わらない様子で、健吾が立ち上がって歩きだす。
あたしはその背中から顔をそむけ、アパートへと戻った。
一段ずつ階段を上りながら、健吾との思い出がよみがえった。