LOVE and DAYS…瞬きのように


「こんど、あのマンションを手放すことにしたんだ。

君にとっても思い出が多いだろうから、先に知らせておこうと思って」
 


健吾のお父さんがあたしを訪ねてきた理由は、それだった。
 

健吾が引っ越してから、誰も住んでいなかったあのマンション。


あたしは健吾のお父さんに連れられて、久しぶりにここを訪れた。
 


一年と、数ヵ月ぶり……。

なつかしい匂いに、胸が詰まる。



「何か思い出の品があれば、持って行くといい」


そう言われたあたしは、ゆっくりと部屋に足を踏み入れた。


まるで、ここだけ時が止まっていたみたい。

耳をすませば、あの頃のあたし達の笑い声が聞こえてきそうで。



このルームシューズ……

健吾があたしに買ってくれたものだ。
 

このクッション……

いつもふたりで取り合いしたね。
 


壁の写真は、はがれてる。

健吾が持っていったのかな……。


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