LOVE and DAYS…瞬きのように

3限目、大嫌いな数学の授業が始まった。


黒板に書かれた数字を見てもあくびしか出てこない。

あたしは教科書の上に頬杖をつき、窓の方を向いた。
 

真由ちゃんいわく“特等席”のここからは、中庭の風景がよく見える。

花壇に咲いているカラフルなパンジー。

丸く手入れされたツツジの木もきれいだ。
 

その向こうを、二人乗りのバイクが通り過ぎていくのが見えた。


「あ……」
 

今の、健吾じゃなかった?
 

大きな木が邪魔してよく見えなかったけど、運転していたのはたぶん健吾だ。

後ろの人は誰かわからなかったけど――


「こら、そこ! よそ見するな」

「はいっ」
 

先生に注意されたあたしを、ミツルが小声で「だせー」と笑った。

自分だってしょっちゅう先生に叱られてるくせに。

あたしは渋々ノートを開き、黒板の文字を書き写すふりをした。
 


……健吾。

駐輪場の方に走って行ったよね。

てことは今ごろ登校してきたのかな。余裕だなあ。
 

ノートに視線を落としてぼんやり考えていると、教室の後ろのドアが開いた。


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