裏表恋愛心理
サラサラな長い黒髪に真っ赤なしっとりとした赤い薔薇のように色づいた唇を潤わせ、黒真珠のような輝く瞳は誰もを魅了するそんな彼女に言葉を失った。
「紹介するよ、俺の彼女の柚月」
遥人が私の名前を呼んだことにより、現実に戻った私は慌てる素振りを見せることもなく綺麗にお辞儀をして自己紹介をして見せた。
「柚月です。いつも遥人がお世話になってます」
「“初めまして” 柚月さん。僕は遥人の友達の響です。そしてこっちが僕の彼女の薫子(カオルコ)」
「初めまして。よろしくお願いします」
品のあるその声にただ目を伏せることしか出来ない私は、ただ遥人と腕を掴んだ。
「じゃあ、早速行こうか。遥人、ちゃんとチケット用意してきただろうな?」
「もちろん!」
少し前にクジで引き当てたという遊園地のペアチケットを私達に見せつける遥人は、無邪気に私の手を引いた。
「とことん遊んで楽しんでいくぞ〜!」
「ちょっと遥人、はしゃぎすぎだって!」
笑顔を振りまく遥人が眩しくて、とても見てられない。
その勢いに私はただ足を揃えるだけ、ただ今は遥人の彼女のフリをすればそれでいい、ヘマだけしないように……それだけを考えよう。
ただそう思ってはいたけれど、案外楽しいことを目の前にチラつかされるとその考えは突然に消えていった。
本気で遊んで、遥人といい勝負と言わんばかりにはしゃいでしまった。