裏表恋愛心理
ただそうしていないと、色々と考えてこの場からいなくなりたいと思ってしまうと本能が訴えかけていたからかもしれない。
休憩がてらに座ったベンチでは響さん達とは距離があって、私はこっそりと遥人に耳打ちした。
「バレてないよね?」
「うん。バレてないよ」
そっか、と小さく呟いた私は遥人が買ってきてくれたカフェオレを小さく啜った。
段々と日が傾く空を私はただ黙って遥人と一緒に眺めた。
「演技、キツくない?」
「うん、大丈夫だよ」
「なら良かった。あ、それ俺にも一口、頂戴」
私が答える前に飲んでいたカフェオレをグイッと一口喉に流し込んだ。
「ちょ、ちょっと」
こんなことぐらいで動揺するなんて、私なんか変だ。
「柚月って昔から甘いの好きだよね」
私の好きな飲み物を知っていて買ってきてくれたんだと知った私は動揺したのを隠すかのようにそっぽを向いた。
「……お子ちゃまで悪かったわね」
「別に、悪いことではないでしょ。これは」
触れられる距離に遥人がいる、その感覚だけがダイレクトに伝わってきてもどかしさが渦を巻く。