裏表恋愛心理
何度も何度も追いかけてくるお化けに、響さんが怖がって私の手を掴んで走り出す。
出口へと出た私達は息を整えるしばらくの間、その手を握っていた。
「心臓……飛び出るかと、思った……」
切れる息でそう吐いた言葉に私は、ですね。と短く返す。
どうしたの?とでも言わんばかりの響さんのその顔に、私は思わず掴まれた手をそっと振りほどき、涙目になりながら薫子さんをおいて出てきた遥人に向かって歩いた。
そして平然とお化け屋敷から出てきた薫子さんに遥人と共に謝って、偽造のダブルデートは幕を閉じた。
遊園地から出ればそこは現実が広がるただの街で、夕焼け色に染まったその街に溶け込むように歩いていく、響さんと薫子さんの姿を私達はただ黙って見送った。
「少し歩こう、柚月」
「うん」
遊園地の近くにある運動公園にたどり着いた私達は、幼なじみの距離感で人の気配が少ないその道を歩いた。
木々に阻まれ届かない夕日の光が、まるで私を見捨てたかのように思えて私はその場でしゃがみ込んだ。
「柚月……」
気配が消えたのを察知したのか、遥人が私の隣にやって来てそっと背中を撫でた。