翡翠の森
不可解なプロポーズ
眼前に広がる白亜の城に、ジェイダはただ呆気にとられていた。
(……本当に王子様だったんだ、この二人)
まるっきり疑ってかかった訳ではないが、それでも何度か最悪の想像はしていた。
幸い、昨日は疲れて熟睡できたけれど、再びロイの馬に乗ってしまうと、おかしなドキドキと緊張とでもやもやして。
騙されて、どこかに売り飛ばされるとか。
捕虜となるとか――一方で、王都が近づくにつれ次第に冷えていく空気と対照的に、頬にロイの背中を感じてしまうのだから、乙女とはつくづく厄介なものだ。
「さてはジェイダ、信用してなかったんでしょ」
そんな様子を目聡く見つけ、ロイが笑う。
「まぁ、そうだよね。僕なら絶対、逃げてるよ」
とんでもないところに来てしまった。
それは間違いない。
あの宿屋では、終日他の客と居合わせることはなかった。
十中八九、ロイが手配をしておいたのだろう。
だが、これからはそうもいかないだろう。
ロイやアルフレッド以外の人と、会わないでいられるはずもない。
このトスティータで。