翡翠の森

形はそれぞれ違っても、始まりは始まりだ。


「まだ分かりませんよ。これからたくさん、アルフレッドのことを知れるはずです。最初は王妃様かもしれないけど、今後一人の女性として。私たちだって……」


始まりは、おかしなプロポーズだった。
ロイも、最初はこう言っていたではないか。


『僕を好きになって、なんて言わないから』


ジェイダだって、彼を無茶苦茶な王子様としか思っていなかった。
それが今では、国を思う立派な青年に見えるし、それに――。


「……そうですわね! ジェイダ様を見ていれば、今日参ったばかりのわたくしにも分かりますもの。今では、深く想っていらっしゃるって。わたくしもロイ様を見習わなくては! 」

「え、や、あの……」


そんなに見てすぐ、分かってしまうものだろうか。
自分ですら、最近彼に惹かれているのを認めたばかりな気がするのだが。


(まさか、そんなにベタ惚れに見える? )


近くに控えていたジンと目が合った。
考えていたことが分かったのか、彼女は意味ありげに微笑んでみせる。

そうしてしばらく話していると、ロイが彼女の世話役らしき人を連れて訪ねて来た。


「それでは、ジェイダ様。また是非」


明るく言ったエミリアだったが、見ず知らずの世話役を従え歩く姿は小さく見える。


「エミリア様はどうなるの……? 」

「今のは、アルが信頼している人間だから、大丈夫だよ」


そうではない。
首を振ると、ロイが困ったと首を傾げた。
問いの意味を知ったうえで、見当違いの返事をしてきたのだ。


「……あまり考えない方がいいよ。二人とも理解している。……そういうものだから」


今までは、王妃となるのがアルフレッドにいい相手だったらと思っていた。
もちろん、それは変わらない。
それでも同じ女性として、何とも言えない気持ちになる。


「……うん。でも……」


そうは言っても、今日は彼らが初めて夜を明かす日になるのだから。


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