翡翠の森
「ロドニーも今頃、きっと同じことを考えている。呼応してるって言うのかな。不思議なことだけど……君がそう言うなら、きっと」
ロイの思い出を盗み見たようで申し訳なかったが、彼はそう言ってくれた。
「ジェイダ」
ピクリと跳ねた体を、彼が見過ごすはずはない。
その証拠に、ロイはふっと笑みをこぼした。
(なに反応してるの……! )
ただ、名前を呼ばれただけだ。
それが唐突に感じてしまうのも、いつもより低音に聞こえるのも。
自分勝手な錯覚に違いないのに。
「ねえ、質問。こうしてお喋りするだけで、僕を深く知れると思う? 」
その問いかけが、意味深に思えて仕方ないのも。でも、もし、万が一。
(気のせいじゃなかったら……? )
夢で見たアイスブルーが、今は妖しく捕えて離さない。
「……他に、何か方法あります……? 」
隣にいるロイから逃げようと、反射的に腰を引く。
けれどもそれより早く、彼の腕がそれを阻んでいた。
「それはもちろん。ジェイダが許してくれるなら」
抱く腕に引き寄せられ、上半身が彼へと傾く。
その瞳を見つめては駄目だと、本能的に思う。
なのに尚更、吸い寄せられてしまうのだ。
「えっと、それは……」
(何だろう、これ。こんな話してたんだっけ)
「僕を“もっと”知りたいんじゃなかった? 」
確かに、知りたい。
だが、そんな言い回しをしただろうか。
必死に記憶を辿ったが、全く思い出せはしなかった。
けれども何故か、これだけは合っていると思う。
この前も、こうして動けなくなった。