翡翠の森
未来への道筋
・・・
ジェイダとは、そんな時間を過ごしたものの。
兄には文句を言わずにいられなかった。
「だから、言っただろう。あいつなら、そう言う。そして引く訳がない」
それ見たことか、とアルフレッドが言った。
「だから、言ったじゃないか。ジェイダに言うべきじゃないって。言ったらそりゃ、こうなるさ」
ロイも兄と同じ言葉を遣い、言い返す。
彼女が聞いたら黙ってはいないことなど、分かりきっていた。
そう、兄にいちいち言われずとも。
「教えずにお前が発っていたら、もっと大変なことになっていた。ロイは戻ってこないわ、ジェイダが当てもなく飛び出すわでは、始末に負えん」
「そうならないよう、頼むって言ったろ」
(あの時なら、まだ間に合ったんだ)
ジェイダにここに残るよう、伝えた時なら。
あの時は、本気でそう思っていたのだ。
彼女が何と言おうと、断固拒否すると。
たとえ、泣いてすがられたとしても。
(ああ、くそ)
いくら言っても、聞きはしない。
泣いて頼むどころか、ねじ伏せようという気合いすら感じる。
ジェイダ本人が宣言したように、これでは放っておいても一人で追いかけてくるに違いない。
(そのくせ、気が済むだけ言ってしまってから、泣きそうになるんだもんな)
『一人で行かないで』
潤んだ瞳で懇願され、渋々了承したものの。
(……ノド鳴っちゃったよ。男って、損)
ゴクリ。
そんな場面ではないのに、異様に生々しい音が鳴ってしまった。
ジェイダが恨めしい反面、彼女に聞こえていないことを必死で願ったりするのだから。
――重症。