翡翠の森
「同盟は組みたいよ。互いにいいところはあると思っているし。少しずつでも歩み寄れば、いつか必ず好意をもちあえると信じている」
でも。
「祈り子なんてものは、間違っている。それだけは変わらない。それに……」
(……ああ、そうか)
「僕は、あの子を好きになった」
兄が、しらを切っていたのではなかった。
「ジェイダを捧げたくなんかない。精霊にも、神様にも。キャシディは論外。それから……」
(僕が言わせなかったのか)
「兄さんにも」
兄は、自分の想いを言わなかったのではない。
――言えなかったのだ。
(当たり前じゃないか)
祈り子という特殊な肩書きがあるとはいえ、ただの女の子。
それも、長年敵対している国の。
そんなジェイダを望むなど、国王である彼が口にできるはずもない。
何より兄の性格では、言う訳がないではないか。
――弟の彼女が好きだ、などと。
「……ふっ……」
吹き出す音に眉をひそめる間もなく、アルフレッドが笑いを爆発させた。
「……頭、大丈夫? 」
「くくく……。お前こそ、色ボケも相当じゃないか? 」
(惚けるほど、色っぽいことできてないっての)
「……あのね」
「確かに、私はジェイダを気に入っているが」
(だろうね。っていうか、バレバレなんだよ)