翡翠の森

「今は? その然るべき方があの子だって、理解してくれてる? 」

「はい。……目が覚めました」


穏やかに微笑まれ、心が満たされる。
彼がジェイダを正しく理解してくれたことが、こんなにも嬉しい。


(デレクも、父親だから)


幸せなことだ。
父親同然の存在が、二人もいるのだから。


「ありがとう。ジェイダも喜ぶよ。彼女、デレクのこと好きみたいだし」


ジェイダを連れてきた時。
デレクは彼自身が認めたように、反対していた。
なのに彼女は、デレクに悪い印象はもたなかったらしい。
それどころか、彼に同情的ですらあった。


「そのようですな。私は失礼な態度だったでしょうに、にこにこと駆け寄って来られて。……驚きました」


その様子を想像して、ロイはクスッと笑った。
が、すぐにその表情を引き締める。


「……それだけ、他の奴らが酷いってことさ。たったそれだけ……普通に接するだけで、彼女にとっては優しい人だ」


可能な限り側にいてあげたいが、そうもいかない時もある。可哀想に、辛い目にも遭っただろう。


「僕たちも見習わなくちゃ。……昔、互いに酷い傷つけ合いをした。それでも僕らを受け入れ、共に歩んでくれる。それが無知ゆえだとは、僕は思わない」


ジェイダとて、初めは怖がっていたのだ。
無理矢理連れてきたのだから、信用もされてはいなかった。
それが今では、デレクに笑いかけ、ジンやエミリアと長年の友人のようにお喋りをして。

そして、こんな自分を好きになってくれた。


「彼女は、本当に……」


この先は、いつも言えない。


「ええ。ロイ様にお似合いの方です」


それを察したのか、デレクが引き取ってくれた。


「……うん」


絶対に、させるものか。
ジェイダは捧げものなどではない。


(……守るさ。恋人……婚約者、だろ)


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