翡翠の森
どんなに自分を励ましても、感覚が甘く痺れてしまう。
ロイの手は相変わらず頬に触れたままだし、残念ながら止めてくれる人もいない。
(ぎゃー! 何で真顔でいられるんだろう。王子様って、そんな訓練もするのかな)
口には出せない悲鳴を心にしまい、何とか平静を装おうとする。
けれども顔が赤みを帯びるのは、どうしようもなかった。
「そうしてると、普通の女の子なのに」
意外な呟きに、思わず彼を見上げた。
自分はどう見ても、ただの平凡な女の子だが。
「……待ち遠しいってこと。君が僕だけのものでいてくれる日が」
「……っ、ロイ……」
強烈だ。
一体、今日の彼はどうしたというのだ。
同じ車内で、デレクは狸寝入りをしているし、ジンもニヤニヤして成り行きを見守っている。
「その為に頑張るとするよ。あまり長引かないように」
「そうね。早く、落ち着くといいな」
(……よし)
会話から過度な甘さが減りそうで、ほっと息を吐く。
「ん。僕も辛いからね。……ああ、ジェイダもかな? 」
「え? 」
辛いと言えば、もちろんそうだ。
これから歩む道は、苦難が待ち受けているだろう。
(……でも、なんか、ロイの声が……)
これまでの経験からか、それとも本能的な警報か。ジェイダの体が固まる。
「あんまり待ちすぎると、たがを外した時大変だよね。そうならないよう……ぼちぼちいく? 」
(出たー!! )