翡翠の森

初めてドレスを目にして、ときめくどころか胸がざわついた。
祈り子である自分に、こんなにいい部屋を、豪華な衣装を与えてどういうつもりなのか。
まさかとは思うが、足枷の為に重いドレスを――。


「ジェイダ? 終わった? 」


ドアがノックされ、嫌な考えを中断してくれた。


「あ、やっぱり。実際にジェイダに会ってみて、こういうのが好きなのかなって思ったんだよね。よかった、似合うよ」


そんなお世辞を言ってくれるロイに、自分を責めた。


(私ったら、何て事を考えて……)


きっと、他意はないのだ。
無理矢理連れてくることになる少女の為に、部屋を飾りつけ、服を準備してくれた。
ロイは目的を果たそうとしているだけ。
それも私利私欲の為ではない。

トスティータとクルル。
このふたつの国の為に。


「何だ、この趣味の悪い部屋は」


気持ち悪そうに、アルフレッドが入ってきた。


「来たね。ジェイダも座って」


ベッドに腰掛け、ロイの口元を見つめる。
ふわふわで肌触りもいいけれど、自分では寝付けないかもしれないな、と思いながら。

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