翡翠の森
「何があった。元々そう信用していた訳でもないが、あいつらが発ってから余計におかしいぞ」
馬鹿にされているのだろうか。
怪しい女を自室に置き、面と向かって様子がおかしいなどと。
「……性格が悪いと言われませんか? 」
弟の方が、まだ可愛げがある。
まあ、どっちもどっちか。
思わず本音が漏れヒヤリとしたが、アルフレッドは怒ることなく、それどころか盛大に笑った。
「そうか? なかなか面白い人だ、貴女も。最初から、それを見せておけばいいものを。面倒ではないか? 」
それほど自分は、どうでもいい存在なのか。
信用できずとも、側にいても大した害もない。
手を伸ばしかけるまでの、色香すらも。
「ロイが隠れ蓑になってくれているが、私も確かにひねくれている。むしろ、あいつの方が真っ直ぐだ。進む方向が、多少斜めなだけで」
目で座れと促され、渋々ベッドに腰掛ける。
「したくもない決断をする時。それが非情であればあるほど、個人の感情が邪魔になってくる。……私も、貴女も」
隣に座られ、エミリアは咄嗟に距離を取ろうとした。だが、男は図体の割に俊敏だった。
「けれど……私とて、優しくあれたらと思っているのだ。今はこうでも、いつか実るのではと」
「……ジェイダ様を想いながら、ですか? 」
間髪を容れずに言うと、アルフレッドはまた楽しそうにするのだった。