翡翠の森
抱き寄せられ、身を捩ろうとして止まる。
抵抗する理由などない。
あってはならないのだ。
「本当にどうした? それではまるで、妬いているように見える」
広い。
その身長故に、彼の腕が長いからか。
それとも、お互いがまだ、溝を埋められないからか。
この空間が、心細くて堪らない。
「貴女を腕にして、言うことではないが。……あいつに好意を抱いていたのは本当だ」
最低だ。
男女間において、正直もほどほどにしてもらわないと困る。
王とその妃なら、尚更目隠しも必要ではないか。
「それでも、手を出そうとは思わない。ロイのことがなくてもな」
「嘘です」
女に好意をもちながら、そんなことがあるものか。
「本当だ。色気は感じん。信じてもらわなくても構わないが。……今のところは」
これだから、男は嫌なのだ。
大切な女には手が出ないくせに、どうでもよくても対象になる。
「貴女はどうなんだ? エミリア」
心の中で罵っていると、トンと肩を押された。
「な……」
気を抜いていた。
唇を噛む頃には、エミリアの体はしっかりと横たえられている。