翡翠の森
そっちこそ、何故そんなに悲しそうな顔をするのだ。
寝室で他の女を語りながら、この体を腕に留めて。
「もっと、自分の身を思え。残念ながら、これが答えなのだろう? ……今の私たちの」
そっと目尻を拭われ、エミリアは驚愕した。
――泣いている。こんな自分が。
彼が体を起こし、思わず手を伸ばす。
「あ……」
アルフレッドが驚いた表情を浮かべ、エミリアは手を引っ込めた。
何をしようというのだ。
もしかしたら、いや、そんな馬鹿な。彼を引き留めるなど、するはずもないのに。
「貴女は何を望んでいる。操りやすい、間抜けな王か。それとも……」
再び頬に手が降りてきたが、エミリアは何も言えなかった。
『はい、その通り』などと、言えるはずないではないか?
そう、肯定できないだけのこと。
よもや、彼の心を欲しがっているなどあり得ない。
「貴方が欲しいと言ったら、信じて下さいますか」
声が震える。
そんな自分が嫌だった。
「……いや」
すぐに否定され、クスリと笑う。
正解だ。
嘘以外の何でもないのだから。
「だが……それが本心なら、どんなにいいかと思う私もいる」