翡翠の森
指がエミリアの頬を往復する。
アルフレッドは一体何をしているのだろう。
それに何故、またこの目は涙を溢してしまうのか。
「何があったのか知らんが。休むといい」
警戒しているのなら、どうして追及しない。
ここで泣いている女を気遣うほど、彼が愚かとも親切だとも思わない。
なのに、アルフレッドは少し思案した後、エミリアの隣に転がった。
「何を……」
広い胸に視界を遮られ、何も見えない。
それはつまり――抱きしめられているのだ。
「誘ったのはそっちだろう」
暴れるエミリアを簡単に封じ込めるが、それ以上事を進める気はないらしい。
広い――やはりそう思ったが、先程のような心許なさは感じない。むしろ――。
――ほっと、する……?
まさか。
好きでもない男の腕で、安心するなんて。
だとしても、今だけだ。
そう、疲れているだけ。
指先が、彼の腕に触れていることも。
彼がそれを知りつつ、見過ごしてくれていることも。
エミリアは気づかないふりをした。