翡翠の森
・・・
「ふう……」
あてがわれた部屋は、トスティータにいた頃と負けず劣らず豪華だ。
だが、当然ながら乙女チックな飾り付けも、テディベアもいない。
そのせいか、ジェイダはそわそわして落ち着きがなかった。
「大丈夫? 」
汗を拭うジンは、疲労の色が見える。
日頃鍛えていたとしても、この温度差はしんどいに決まっている。
「ええ」
尋ねてしまい、すぐに後悔した。
彼女がそう答えることは、分かっているのに。
「少し休んだ方がいいわ」
「平気よ」
それから、すぐに頷いてはくれないことも。
けれど、そこで諦める訳にはいかない。
「ずっと起きているのは不可能だし、体を休めるのも大事じゃないかしら。それに」
ビシッと人差し指を突きつけ、ジンを見上げた。
「友達の助言は聞いておいた方がいいわ。私たちだって、この時間帯は長時間出歩くのは控えているもの。慣れなければ、尚更よ」
何の仕返しにもならないのだが、何故か得意気になるジェイダの頭をジンが軽く叩いた。
「何よ、それ。向こう見ずな貴女と、一緒にしないで頂戴。……まあ、でも、確かにずっと起きているのも無理な話だしね……」
そう言うと、さりげなく異常がないことを確めた後、ベッドに腰を下ろした。