翡翠の森



・・・


ロイは落ち着かなかった。


「どうなさったのです? 」


ただでさえ暑さで苛々するのに、側でうろつかれて目障りなのだろう。彼らしくない声で咎めてきた。


「何で、ジェイダと同室じゃないんだろ」

「……勘弁して下さいよ」


道中のことを思い出したのか、デレクはますます不機嫌になる。


「ロイ様。じいはそれでなくとも参っているのですぞ。若君があのような真似をなさるなんて。ええ、傷つきましたとも」


くどくどお説教が始まる。
嫌味っぽく、ロイが嫌がる呼び方をするあたり、どうやら相当腹に据えかねているらしい。

「……それはね。見方を変えた方がいい」


意外と短気な彼をくすぐったくなりながらも、ロイは諭すように言った。


「僕は彼にひれ伏したのでも、屈服したのでもない」

「しかし……」


事実、そう見えてしまうのでは。
そう言いたそうなデレクを遮った。


「偉大なる先生方は言ったじゃないか。……たくさんの犠牲が出たんだって。弔いに見下ろすなんてできないだろ? 」


だから、ロイは跪いた。
もう、このようなことを起こさない。
その為にできることを。
出身など関係ない。
人として祈り、決意する為に。
そのどこに、厭うことがあるだろうか。

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