翡翠の森
それがどうだ。
「もう二度と、それを名乗るな。アルバート様」
少し意地悪だが、面倒見のいいもう一人の兄だったレジー。
嫌われるなど生ぬるい、これほどまでに憎悪の対象になるようなことを、知らずにしていたのか。
もしかしたら、だからあの日を境に彼らは来なくなったのか。
(……ロドニー)
実の父親以上に、父でいてくれた。
ロドニーもまた、息子と同じく自分を恨んでいるのだろうか。
だとしても、いや、そうならばなおのこと――。
「……教えてくれ、レジー。あの日、何があった? 」
(僕は知らなくては)
彼らに出会って今まで、家族だと思い生きてきた。
二人の存在があったからこそ、馬鹿にされても蔑ろにされても頑張れた。ジェイダに逢うことだってできた。
疎まれていても、それを放ったままの和平など不可能だから。だから――。
「ぐっ……」
いきなり鳩尾を打たれ、視界がぐらつく。
「何度言わせる。……もう、どうだっていいんだよ。ここも、お前の国も。どうなろうが構うものか」
足元に崩れるかつての弟を見下ろし、レジーが何事か呟いていた。