翡翠の森


・・・


二人の恋の進み具合は、かなりゆっくりだ。
当然ながら、ロドニーにとっては正念場も多々あったが。
それでも、どこかで満足していたのも本当だった。


『どんなところなんだろうな』

『禁断の森? 』


一人言に、すぐにジェマが反応する。
彼女のこういうところも、ロドニーは好きだった。
愛の囁きは嫌がりながら、人がタブーとしている話題には、躊躇いもなく食いついてくる。


『そう。子供の頃は、入ったら連れ去られるとか言われてきたけど。そんなこと、ある訳ないし』

『そうね。普通に考えて……トスティータの人と関わらせないようにする為でしょうね』


女の子どころか男だって、この話は煙たがるのに。
真剣な顔で、考えをはっきり伝えてくるのに好感をもつのだ。


『……何とかならないものかな。いつまでも睨み合っていたって、いいことなんかないのに』


ふと空を見上げれば、今日も雲ひとつない晴天だ。


『本当に。あちらは雨も多くて、寒いのでしょう? 時々、天気を交換……はできないけれど。人が助け合えば、願うよりもずっと早いのにね』


つられたように空を仰ぐ、ジェマの横顔。
いつものように美しく、呼吸ができなくなりそうなほど苦しい。
とても見ていられなくて、ロドニーは目を逸らした。


『ジェマ』


漠然とした不安に襲われ、彼女を少しだけ乱暴に抱き寄せてしまった。

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