翡翠の森
『……ダメ……っ! 』
はっきりとした拒絶に、ロドニーは我に返った。
『……ごめん……! 』
慌てて退くと、ジェマの瞳には涙が浮かんでいる。
それだけはすまいと思っていたのに。
こういう泣かせ方は最低だ。
正直にいえば複雑であるが、こうなっては男が悪いのだ。
『……ごめんね』
手を伸ばしかけ、やめる。
怖がらせておきながら、触れていいとは思えない。
『……っ、違うの!! 』
それを見た彼女は、叫び――なぜだか、いっそうロドニーを離そうとはしなかった。
『違う……ごめんなさい』
襲われそうになった女性が、どうしてその男の首に腕を回しているのか。
悪いのはこちらであるのに、どうして彼女が謝っているのか。
『ジェマ? 』
疑問でいっぱいだったが、触れるのを嫌がられているのではないと知り、ほっとする。
『私、あなたといてはいけなかった。そんなの、ずっと前から分かっていたのに』
『何を……』
いてはいけない?
なぜ?
まさか、決められた許嫁でもいたのかと思ったが、告げられたのは別の言葉。
『私、選ばれたの。クルルの乙女に』