翡翠の森


・・・


その後、二人の間に元気な男の子が生まれた。
名前はレジー。
元気すぎるくらい元気だったが、根がまっすぐでいい子だ。

ジェマはロドニーと、いや、男と結ばれたことで、事実上町を追い出された。
陰口はいつものことだったし、面と向かって責められることも多かったからだ。
夫婦としても何と返答したらいいのか分からなかったが、雨が降らないままであるのもまた事実だった。

こうして、ロドニー一家はひっそりと暮らすことになった。

町の外れも外れ。
皆が近寄らない、禁断の森からも程近い場所に。


『ジェマ! 』


それでも、不幸だとは思わなかった。
今日も笑顔で一緒に過ごせるし、彼女の側ではレジーが走り回っている。


『どうしたの? 』


ただいまよりも先に名前を呼ばれ、ジェマが吹き出した。
嬉しいことがあったのがバレバレだ。
だが、いくら彼女でもこれには驚くだろう。


『さっき、あの森に寄ったらさ。なんと! トスティータの男の子に会ったよ』


ロドニーもジェマも、あの森が好きだ。
穏やかで、誰も誰にも拒まれない平和な場所。


『迷いこんだのかしら? 』

『うん……何か、複雑な事情があるようだったけど。小さくて生意気で……可愛い子だった』


バレたら大変なことになると知っているだろうに、ジェマは何も言わなかった。
それどころか、我が子を見るように目を細めてくれる。


『レジーとも仲良くなれると思ったんだけど……今頃、家族に咎められているかもしれないね』


ここにいては、レジーに遊び相手もできない。
ロイとならいい友達になれるだろうし、二国の子供たちが交流するのは素敵なことだ。


『ロドニーらしくないわ。もしかしたら、その子やご家族だって、あなたに会うのを楽しみにしているかも』

『そうだった。……ありがとう、ジェマ』


手が重ねられ、微笑み会う。
そう、けして諦めたりはしないのだ。


< 203 / 323 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop