翡翠の森
(……僕も会いたかった)
「親父も馬鹿なことをした。理想など追い求めて、女を匿ったりしなければ。……何も死ぬわけじゃない。祈り子の任期を終えてからでもよかったものを」
「それは違う」
睨み付けるレジーの眼差しは鋭かったが、ロイは怯まなかった。
「何が違う。お前らの甘い理想の犠牲になっては堪らない」
「なら、傍観するのか。無理矢理選ばれた子が倒れていくのを。ゆっくりと、でも確実に国は衰えていく。このままでは、やがて人も住めなくなるよ。それを、黙って眺めていくの? 」
「夢を見るなら、自分の国でやれ。お袋もあいつも、大人しく祈り子をやってりゃこんなことには……! 」
「――取り消せ」
できるだけ穏やかに済まそうと思っていたが、それはロイが許せる言葉ではなかった。
「レジーだって、本気じゃないだろ。お母さんが祈り子を全うしていたらなんて。……僕は我慢ならない」
自分を罵るのは構わない。
夢物語で終わらせるつもりなどないが、現実に目をやれば、ほぼ夢に近いことも理解している。
世間知らずなお坊っちゃんだと。
そう言われて腹が立たなくなって、もう長い。
けれど――。
「人の女に、身勝手でふざけた真似をさせるな」