翡翠の森

マロと話している間も、ジンとデレクの会話が続けられる。


「ご自分を責めても仕方ありません。無理をしたロイ様がいけないのです。今はそれよりも、探さなくては」

「しかし、どうやって? 我々が大っぴらに動けば、不審なだけです」


デレクの言うことももっともだ。
地下牢のような場所ということは、この部屋の近くにいるとは思えない。
だが、招待客が関係のないところを彷徨いては、見咎められるに決まっている。


《大変だと思うけど、ジェイダしかいないんだ》


それでも、やる以外選択肢はない。


《お詫びになるか、分からないけど。ジェイダに伝えるね》


お詫びなんていい。
そんなことよりも、今は一刻も早くロイを探さないと――。

――ジェイダ――

突然、頭の中で語りかけてくる声が変わった。


(ロイ……!! )


彼を見つけるのに、少しでも有益な情報はないのか。
何でもいい。どんなに小さなことでも、手掛かりはないのか。
聞きたいことは沢山あるのに、何も出てはこなかった。
その声がしたことが、ただ、嬉しくて。


――僕は、無事――




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