翡翠の森
(無事……)


それを聞いて、ひとまず安堵の息が漏れる。
音で聞こえるのではないのに、ちゃんとロイの声だと認識できるから不思議だ。

おかげで。


(……よし!! )


俄然、力がみなぎってきた。
いい方法なんて思いつかないし、それどころか案など何も浮かんでいない。
けれども、恋する乙女の力を侮ってはいけないのだ。


(とにかく、こうしていても仕方ないわ)

《わー! 待ってよ、ジェイダ! まだ、伝えてないことがあるんだってば》


すくっと立ち上がると、マロが叫び声を上げた。


(もう、なに!? 早く行かないと……)


ロイと違って、マロの声はキーンと耳をつんざく。
関係ないはずの耳を押さえながら、文句を言った。


《まったく、もう。さっきまで、へばってたのによく言うよ。…あのね、ロイを閉じ込めたのはレジーなんだ。……今のキミは知ってるよね》


まさか。
ジェイダにもすぐには信じられない。
レジーのことも、幼いロイのことすらよく知らないのに、夢を見ただけでこう言うのはおかしいだろうか。
それでも、あんなに仲のいい兄弟だったのに。


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